三響會オフィシャルウェブサイト
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「鼓に生きる」―― Report

file.03落語家・三遊亭金朝さん

Reportでは、書籍の刊行に携わった方をご紹介して参りましたが、今回は趣向を変えて、読者の方のインタビューをお届けします。
実は田中佐太郎と浅からぬご縁があった落語家・三遊亭金朝師匠にお話を伺いました。

名前と偶然が結んだ縁

 

わたしは、四代目の金朝になるんですけどね。実は二代目の金朝は、十一世傳左衛門先生のお祖父さん、三代目は二代目のご長男に当たるんです。
真打になる時に名前変えてえなあって、色々探してたら金朝っていう名前があって。圓朝の朝がついていて、金馬一門の金があって。
99年ぶりに、わたしが金朝の名前を襲名することになったんですけど、まあ、名前のこと調べますよね。そしたら、あ、二代目、三代目の金朝師匠は、あの田中佐太郎さんの曾祖父さんとそのご長男さんなんだってわかって。

金朝の襲名なんてこれっぽっちも考えてなかった、今から10年くらい前に、玉三郎さんと佐太郎先生が対談された雑誌の記事を拝見していて、この芸談はすげえなぁ、傳左衛門さんたちのお母さんって、こんな厳しい人なんだなっていう印象を持ってたもんだから、あ、あの人の、ああ、ええ、そうなんだ!って、まあ驚きましたね。

落語家のね、必修科目なんです。太鼓は。もちろん歌舞伎の太鼓とはちょっと違うし、この方々みたいには打てないけども、着到とか片砂切、一番太鼓、二番太鼓、追い出し太鼓なんか一通りやるんですよ。それに加えて、我々金馬一門は全員、先代の金馬師匠の時代から、笛をやんなくちゃいけないって教えで、それでわたしも無理やりやらされたって感じなんだけど、まあ、おかげさまでなんとなくね。落語の出番がないときでもね、名人会の楽屋にちょっと顔を出せて袖で聴けるなんて感じで。噺家でも笛を吹くひとは、まあ、少ないんでね。

自分も笛吹いたりとか、ちょっと踊りをかじったりとか、歌舞伎も好きで通ってたんですよね。芝居の話も好きなんでね。金朝って名前はいいんじゃないのかな、名乗ってみたいなって思いましたね。幸い、先輩方の反対もなかったし、あたたかく迎えてもらえた。
ある師匠に、先代の周りの方へのご挨拶なんかはどうですかねえ、って相談したら、「色々やるとあちらも却って大変だろうから、まあ、いいんじゃねえか?怒られたら金馬師匠に謝ってもらえば大丈夫だろ」と言われて。でも、私の中ではやっぱりご挨拶ができていないことが引っかかってはいたんです。

で、それとは別に、去年、たまたま地元のワインバーで「鼓に生きる」担当の宮﨑さんと知りあって。そしたら実は今、佐太郎先生の連載をやってるんですという。じゃあ、機会があったら是非ご紹介くださいよなんて話をしてたら、ちょうど三響會の20周年の記念の公演があって、その時にご挨拶できそうですよっていうんで、お誘いいただいて、ようやくご本人にお話ができまして。あれで本当にずいぶん気が楽になりましたよ。

でもって、今年の秋。有楽町マリオンの朝日名人会に、お囃子の手伝いに来てくれっていうんで笛を吹きに有楽町へいったんです。早く着いちゃって、(柳家)小三治師匠の本が出てるから買いに行こうかって書店へ行ったら、伝統芸能のコーナーにこの本が平積みにしてあって、それでもってこれは両方買わなくちゃいけない!って。またこれも不思議なご縁だよね。お囃子の手伝いに行って、佐太郎先生の本に出会うなんてね(笑)


三遊亭金朝(さんゆうてい・きんちょう)

1975年生まれ。1998年6月、三遊亭小金馬に入門。前座名「金兵衛」。2001年11月、二ツ目昇進。2013年9月、四代目三遊亭金朝を襲名し真打昇進。

三遊亭金朝オフィシャルブログ「馬鹿だなぁと思っていただけましたら。」
https://ameblo.jp/kincho0921/